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zoom RSS 淡路島行き

<<   作成日時 : 2012/10/03 01:58   >>

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先週末の土曜日の午後から日曜日にかけて、淡路島にある友人の別荘に行った。
台風が近づいているというのに、五十路の男三人で。
このメンツで行くのは、もうずいぶん久しぶりだ。
前回は三十数年前、まだ学生の時だった。
その時は男三人だけではなく、僕の隣には、今では遠い記憶の中の女(ひと)が一緒にいた。
往路の車中、まぶたを閉じれば、あの時代の香りが蘇る。
普段はあまり思い出すこともないけれど、別荘に彼女との思い出の小さなカケラくらいは残っているかもしれない、と僕はふと思ったりもした。

三十数年前、男三人女二人をぎゅうぎゅう詰めに乗り込み、タバコの煙が充満したエアコンも付いていないダットサン・サニーでの大騒ぎしながらのドライブは、今思えばちょっとしたロードムービーみたいだった。
須磨港からのフェリーが数時間待ちのため明石港まで走ったものの、そこでも乗船までやはり数時間待たなければならなかった。
その頃はフェリーで渡り、海岸沿いにいくつかの町と漁港を通り過ぎてたどり着いた場所も、今は明石海峡大橋と高速道路を使えば神戸から一時間程で着いてしまう。
僕たちを乗せたプリウスは、静かにあっけなく別荘に着いた。

時の経過は、別荘の窓から漁火ゆれる夜の海が見えた記憶の風景を一変させてしまっていた。
高速道路が眼前を遮り、ひっきりなしの車群の轟音が、僕の淡い思い出を蹴散らかしながら走り過ぎていく。

往時部屋にあった8トラックのカラオケ装置は、CDグラフィックカラオケというものに替わっていた(それさえも現在ではカラオケシステムとしては古さを感じるけれど)。

かつて活魚をさばいて舟盛りを作ってもらった魚屋は、在るには在ったが営業していなかった。
今回は隣町の活魚店で、アジ、〆サバ、カンパチ、なんとかジャコの南蛮漬のようなものを手に入れた。
時間が遅かったからか魚の種類が少なく、タイの舟盛りはできなかったが、どの魚も旨かった。
隣町には大きなスーパーマーケットもできていて、他の食材はそこで買った。

夕暮れ時、漁港の岸壁からサビキで小アジを釣った。
あいにくの雨降る中での釣果は、三人で計二十五匹ほど。
調理後の写真を撮り忘れたけれど、素揚げにしておいしくいただいた。

そして、夜はこれからとばかりに、カラオケだ麻雀だと気焔を吐きながら宴会が始まる。
歌う曲は、ほとんど70年代の曲であの頃と変わらない。
あの時は今と反対側の席にあの子と並んで座ってたっけ、とテーブルの向こうに彼女と僕の幻影を見る。
過去を思い出したからと言って現在が変わるわけもなく、僕はかえってつらくなる。
あの頃は「今」の歌を歌い、「今」を生きていた。
今だって「今」を生き抜こうとしている。
ただ、あの頃の輝きがちょっと懐かしくて、疑似的な再現をもくろんだだけだ。
それにしても、三十数年前は明け方近くまで続いたカラオケ宴会だったけれど、今回は午前1時頃には全員酔って寝てしまい、フェードアウトであった。

翌日曜日、朝食の買い出しのついでに、前日釣りをした岸壁に置き忘れてきた傘を回収に行った。
台風の影響で、防波堤の内側にもかかわらず波のうねりが大きくなっていた。
黒い海面に吸い込まれるように、突き刺さるように、雨が落ちていた。
傘は見つからなかった。
僕たちは、昔はなかったローソンでカレーのパックを買い、朝からカレーライスを食べた。

この日は、松帆の浦でゆっくりと温泉に浸かってから神戸に帰ろうと意気込んでいた。
しかし、台風の影響で温泉は休業となり、この思いは果たせそうになかった。
そうこうするうちに風が吹き始め、雨も強くなってきた。
結局、五十路軍団は、高速道路の通行止めを懸念し、早めに島を出ることにした。
撤収を終えて車に乗り込む頃には、風雨が本格的になり台風接近の様相を呈していた。
高速道路をしばらく走り、明石海峡大橋の手前のサービスエリアに立ち寄って土産を買い、雨に煙る橋を眺めた後、橋を渡って神戸側に戻った。
渡りきるのに5分と掛からない。
フェリーのように、遠ざかる島影に名残を惜しむ間もない。
昨今の旅は、旅情と余韻を失ってしまった。

「たとえば故郷から旅立つとしたら、船だと港がなかなか見えなくならないから、きっとよけいにつらいよね」
と彼女が言ったことを、明石海峡大橋上の車の中で唐突に思い出す。
それは淡路島を訪れた時ではなく、別の場所だったことも思い出す。
旅情も余韻もなくなったと書いたけれど、こんなことを思い出すのは、やはり「旅」だからかもしれない。
時の経過が変えてしまった風景の中に、時折ふいに三十数年前の光景が重なり現れ、僕の記憶の時間軸を乱し、心を小さく揺さぶる。

この後、数年ぶりに垂水の増田屋で昼食をとってから東灘へ戻り、今回の淡路島への旅は終了した。


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